休日は決まって外出するのが私の父のルーティンだった。
時には釣りに、時には映画館に。
ゲームの大会に参加したこともあった。
なんでも時代に合わせて色々と挑戦していくタイプだった。
だから趣味に関して言えば、アウトドアかインドアかなんて一貫性はなかった。
そんな父の姿を、前向きな姿勢を母は高く評価し、口出しすることはなかった。
母が他界しても父は変わらず、一人で私を育んだ。
寧ろ私を気遣ってか、たまに仕事を早く切り上げて帰宅してくることもあった。
それは母がいた頃には見ることができなかった姿だった。
たった一人で私を育てて、左右どちらを見ても、転んでも誰も助けてくれない、孤独を痛感する空間で涙一つ見せずにいた。
父の背は広かった。
でもそんな父の背が小さく見える時がある。
料理の時だ。
父の作る料理は野菜が不格好で、調味料が効いていないものが多かった。
母の作るもののクオリティとは大きく乖離しており、たまに料理と呼べないものが出てくる時があった。
そんな時は
「ごめんな、今日失敗しちゃったけれど…。」
決まってそういうのだった。
唯一父に届く可能性があるもの、超えられることがあるとすれば料理だったから、食事中に私がお母さんみたいな料理を作れるようになるといった時は父は目を丸くしてその後、
「そうか、楽しみにしているよ。」
と言った。
有言実行ということで私は料理に勤しんだ。
丁度その日、仕事を早く切り上げてきた父が帰宅し、私の料理する姿を見て大層嬉しそうに微笑んだ。
「今日はご馳走だな。久しぶりに食べるから楽しみだよ。料理の香りを嗅いだだけでお父さんお腹が減っちゃうほど腹を空かせたみたいだ。」
私はせっせと食器に料理を盛っていく。
そしてテーブルの上、お父さんの着席しているところから優先的に料理を置いた。
「じゃじゃーん三色丼です。」
みりんと醤油で味付けした鶏そぼろ、軽く塩で炒めたカイワレ大根、母さんに似せて砂糖を少し多めにしたスクランブルエッグ。
私としては、初めて料理を振る舞う側としては結構自信作だった。
「味はどう?」
父に率直な意見を聞いてみると、父は美味い、母さんの味だなと言ってくれた。
自然な笑みが父から溢れていて心底安心した。
と、食べながら父は唐突に言葉を紡いだ。
「明日は日曜日だし、どこかに出かけようか。」
「それは毎週聞いてるよ。」
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