美菜は寒い冬の夜、自室で寝ていた。
突然、部屋中に広がる暖かい光と熱気に目を覚ました。
彼女が眠っている間に、父親の貴久が部屋にストーブを置いたのだ。
美菜は眠い目をこすりながら、起き上がり、ストーブの前に座った。
「おはよう、美菜。寒くなってきたから、ストーブを持ってきたよ」
貴久の声が美菜の耳に届く。
彼女は嬉しそうに笑顔で父親を見つめた。
「ありがとう、パパ!寒くて眠れなかったけど、これなら温かくて快適に過ごせそうだね」
美菜はストーブの炎を見つめながら、心地よい暖かさに包まれていく。
部屋中に広がる熱気が彼女の身体を温め、寒さや眠気が一気に吹き飛んでいった。
「パパ、なんでストーブを持ってきたの?」
美菜が興味津々で尋ねると、貴久は微笑んで答えた。
「実は、このストーブはおばあちゃんの形見なんだ。おばあちゃんが亡くなる前に使っていたもので、とても大切な思い出なんだよ」
美菜は驚きながらも感慨深い表情を浮かべた。
「へえ、そんなに大切なものなんだ。じゃあ、私もこれからずっと大切に使おう」
美菜は心からそう思った。
このストーブが彼女の部屋で、寒い冬の夜を温かく過ごすパートナーとなるのだ。
それからというもの、美菜は毎晩、ストーブの前でぬくぬくと過ごすようになった。
彼女はストーブの炎を見つめながら、思い出話をすることもあれば、ただただ心地よい温かさを感じながら、ぼんやりと考え事をすることもあった。
ある晩、美菜はストーブの前でうとうととしていた。
すると、ふとしたきっかけで彼女は思い出した。
「そういえば、パパ。おばあちゃんがストーブを使っていたとき、いつも何を考えていたのかな?」
貴久はしばらく考え込んだ後、ゆっくりと答えた。
「おばあちゃんは、このストーブの前で心を落ち着けていたんだって。彼女にとって、このストーブは安らぎの場所だったんだよ」
美菜は考え込む。
彼女もまた、このストーブの前で心を落ち着けていた。
寒い冬の夜に、ストーブの炎を見つめながら彼女の心は穏やかになるのだ。
「パパ、ありがとう。このストーブがあるおかげで、私も心が落ち着くんだ。おばあちゃんとも繋がっている気がするよ」
貴久は微笑みながら、美菜の頭を撫でた。
「そうだね、おばあちゃんも喜んでくれると思うよ。このストーブが私たちの絆を深めるきっかけになるんだ」
美菜は幸せそうに微笑み、ストーブの前で過ごす時間を大切にすることを心に誓った。
彼女はこの温かさを、一生忘れることはなかった。
そうして、美菜と貴久は寒い冬の夜を、ストーブの前で温かく過ごすのであった。
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