初恋の人、誠一が亡くなったのは数年前のことだった。
私たちはアルバイト先で偶然出会い、そこから少しずつ仲良くなっていった。
お互いに時間が合えばカフェやカラオケに行ったり、一緒に過ごすことが多くなった。
私の誕生日が近づいてきた頃、私は何かプレゼントをもらえるかなと期待していた。
でも、正直言ってあまり期待していなかった。
だって、彼は体が弱くてお金もなかったし、私に何か買ってきてくれるとは思えなかったからだ。
しかし、その日は彼が何かを隠しているような様子だった。
一緒にカフェに行く途中、彼はドキドキしながらポケットから白い可愛らしい帽子を取り出した。私に向けて微笑みながら言った。
「芽衣、これ、君のために作ったんだ。誕生日おめでとう」
私は驚きと喜びで言葉にならなかった。
彼が作った手作りの帽子。まるで市販品のように完璧な仕上がりだった。
「本当に?これ、誠一が作ったの?」
私は確認しながら聞いた。
彼はにっこり笑って頷いた。
「僕が一生懸命作ったんだ。君にぴったりの帽子だよ」
私は帽子を手に取り、触れると柔らかい手触りが伝わってきた。
その瞬間、私は心の中で彼に感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとう、誠一。本当に嬉しいよ」
私たちはその日、カフェで写真を撮った。
私は誠一とツーショット写真を撮るために帽子をかぶった。
彼の優しい表情と一緒に、その帽子は私たちの思い出を刻み込んだ。
しかし、それから数年後、私は後から聞かされることになる。彼が亡くなっていたことを。
彼の体は弱く、心臓病が悪化していたのだという。
私は彼に好きだと伝えることもなく、別れの言葉も交わすことなく、彼の死を知ることになった。
それから毎年の冬、私は彼からもらった帽子をかぶっている。
それは私たちの思い出の証であり、彼とのつながりを感じる大切なアイテムだ。
誕生日が近づくたびに、私は彼との思い出を振り返りながら、その帽子を被る。
彼が作った世界に一つだけの帽子。私の心の中で、彼との絆は永遠に続くのだと感じるのだった。
彼の存在は、私の心の中で生き続けている。
そして、彼から受け取った帽子は、私にとっての宝物となっている。
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