細く長い指だった。
色白で生気が感じられない。
人形じゃないかと思うくらいの整った顔立ち。
スレンダーというのが正しいのか、ボディーが美しくくびれ、東洋の服を着こなしていた。
よく似合っている。
まるでその服が彼女のために存在しているかの如く、ぴったりとしっかり収まっていた。
違和感の一切はない。
そんないく人を魅了するであろう彼女が私に一体何のようなのだろうか。
「これは夢です。あなたがお望みなら、どんな世界だって構成できます。」
夢の中で、これは夢だと申し出を受けたのは今回が初めてだ。
人によっては逃避したい人もいるだろう。
現実をいきなり突きつけるなんて少々残酷にも思えた。
まぁ私にとってはたいして気に留める文言でもなかったけれど。
どうせこれは私の夢なんだ。
どうせ願うなら現実世界では到底実現不可能なものがいい。
「どうなさいましたか?どんな夢でも自在に言葉のままに変えられるのですがいかがいたしましょう。」
どんな世界でも言葉のままに…。
「なら、イケメン男子のお供と、最高級のケーキとコーヒーを用意してよ。」
そういうと、かしこまりましたと目前の女性は軽く会釈をした。
刹那、明暗の後私はイケメン男子のお供を横にカフェ内にいて、上部がブルーベリーのゼリーで作られたレアチーズケーキとブルーマウンテンのコーヒーが白色のグラスに注がれていた。
いい香りだ。
ケーキとコーヒーを嗜んだ後、思いつく限りの様々なことえおあの女に要求した。
どこの誰だか知らないが夢といえど、これほど幸福度の高い体験は中々できるものではない。
私の人生は薔薇色ではないだろうか。
全て夢だ、覚めれば全てがなかったことになるから、私は一銭も使うことなく、様々な欲求を満たすことができるのだ。
それからというもの、私は幸福を得るために色々な要求をして楽しんだ。
やりたいことを大方やり尽くしたところで、私はふとひとつの疑問に辿り着いた。
夢の中といえどこれほどのことができて、そしてそれの代償たるものが一切ないなんてでき過ぎている気がする。
後々、私は何かを要求されてしまうのだろうか。
そう考えると顔が青ざめた。
「どうかなさいましたか?」
「今まで夢で色々と不都合なく、何でも思い通りに好き勝手やってきたのだけれど、それの代償は何なのかって考えたら新しい要求を思いつかなくなってね。」
そう告げると女はにっこりと微笑んで答えた。
「特にございません。」
「そんなバカな…。こんな理想郷、誰だって欲しがるものだぞ?」
「強いて言うならあなたが死に近しく神と魂も近いから。だから神相応の力を使える。」
彼女は私の目を凝視すると
「また夢で会いましょう、夢でなら何度でも、いいえ迎えの日が来るまで何度でも会えますから。」
そこでテレビの電源を切るようにぷつりと夢から覚めた。
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