ロゴユメ

生き人形

人形 掌編小説

よくホラー映画で物に魂が宿って、人間を襲ってくるなんて物語がある。

現実にそんなことが起きたら人はどう反応し、どう対処するのか気になり検証してみることにした。

ロボティクスは私の得意分野だから、なるべくマシン音が外部に露呈しないように細工し、まるで人形が生きているかのように刹那思わせることが今回の目標だ。

今回のターゲットは私の夫。

時に口うるさいことがあるので、そのうっぷんをはらすのも含めて実験対象に選んだ。

夫が帰宅した。

さっそく物静かな状態にし、モニター越しにロボットを操作する。

ぬいぐるみの容姿のそれが夫に近づいてゆくと、下部に目をやった音の目に留まる。

驚く様子もなく、普通に持ち上げて耳にぬいぐるみをあてる。

あぁ・・・これでは種がばれてしまう。

夫はマシン音を聞き取るとにこやかに笑い、妻の名を呼ぶ。

「面白い悪戯を思いつくじゃないか。これをやったのは君だろう?」

だが私は動じず、スピーカーへ自分の声を送信する。

無論彼の方へはピッチの上がった声が届く。

だから私の存在が彼に悟られることはないだろう。

「私と結ばれることを約束しないのはどうして?」

「君は何を言って・・・」

妻の名を呼び何度もどこにいる。出てきなさいと繰り返す。

やはり彼は気づいていない。

でも彼にふさわしいのはこの私だ。

富裕層と結ばれることを古くから約束されていたはずなのだ。

依頼を受けてから私か感激していた。

もっとも、そんな依頼を私にしてくる時点で、依頼主とその夫は中は良くないだろう。

「ただいま。」

室内に妻の声が響き驚愕する彼。

どういうことだ君じゃないのかと一言こぼす。

何のことやらと返答する妻は夫が何に驚いているのか理解していないようだった。

人形越しに私は次々に言葉を発して説得する。

「あなたの今の女は金を浪費している。
私がその状況下から助けてあげようというわけ。
それだけじゃない。
本物の生き人形と過ごすのが危険だということを知っては・・・。」

発言を遮るように首の付け根あたりに衝撃が走り、目の前が真っ暗になり意識が遠のいていった。

夫はその様子を伺っていたようで驚きの連続で悲鳴を上げた。

妻の腕が変な方向を屈曲していたためだ。

人間じゃない・・・。

私の本当の妻はどこに行ってしまったのだろうか。

何なんだこの悪夢は。

あまりもの成功ぶりに言葉を発する前に、ふふと笑みがこぼれてしまう。

そして耳元で、「ドッキリ大成功」と私は伝えた。

その一言に安堵した夫は膝から崩れ落ちた。

「その女は誰だ?」

「ああこの子?
私の人形だよ。」

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掌編小説私色日記
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