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それが本当なら

友達 掌編小説

もしあの時にこうしていたら。

この時こんな能力があったら。

人は必ず後悔する経験をする生き物であると痛切に思う。

過去から第二、第三に可能性を見出し、空想上で過去の出来事を飾るのである。

だが、最近ではそんなことを考えるのも馬鹿らしく思えるようになってきた。

なぜなら、それが本当ならこうだったらいいと思うことを俺が口ずさむと、隣の席の新田がそれを実現させてしまうのである。

初めは出来ないことを出来るようになることから刺激的な毎日を送っていたのだが、最近は飽きてしまって心底退屈している。

願いがこうも簡単に叶ってしまうと一つ一つの出来事を粗雑に扱ってしまいがちである。

だって後でやり直しが出来てしまうからだ。

新田が何を考えているのかは正直わからない。

なぜ俺に力を貸すのだろうか。

もしかして暇つぶしに俺を使っているのだろうか。

なんとなくその点が気になって、新田に尋問してみた。

すると予想を遥かに上回る返答があった。

「裕太、お前の人生が傾かないように修正をかけるように頼まれてるからとりあえず、お前の望みを叶えてる。」

人生の修正と言ったか。

未来人の関与があるか正直不明だが、修正というくらいだからその可能性は否めない。

「誰がそんな命令をしているんだ?」

「命令だなんて人聞きの悪い。これは俺の善意でやってるんだぜ?」

詳細を聞けば俺のためという結論を並べるばかり。

本当にそれが真意なのか。

よくわからないまま数ヶ月の月日が過ぎていった。

俺を見守るのではなかったのか、新田は卒業を待たずに転校してしまった。

「結局真相はわからず終いか。」

そしてそのまま卒業を迎えた。

だが意外にも真実は子に火を迎えてから知ることになった。

まるでこの日が分岐点だったかのように。

後方から早足の音は聞こえていたが気に留めなかったからら、事後刹那、何が起こったのかわからなかった。

「何で何度も私の邪魔をするの!」

振り向くと顔見知りでもない少女は左手にナイフを握りしめ、恨めしそうにこちらをみている。

新田は金属バッドを片手に少女に向かって構えている。

「俺はさ、最後の日まで裕太の人生を守り抜くのが仕事だからさ。やっぱ何度やってもお前が裕太のことを狙ってくるのは同じだったな。」

「お前…何を言って…。」

「新田、お前まさか未来人だったのか。」

「それが本当ならどうだっていうんだ。」

「俺は誇り高き友人を持ったなって。」

それが耳に届くなり新田は口角を釣り上げた。

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