ある日の朝、裕子は高校に向かう途中、友達と楽しそうに話すグループを見つけた。
その中には、親しい友人たちがいて、彼女たちの明るい笑顔が眩しく映った。
「裕子ちゃん、今度の週末はどうする?」
友達の一人が聞いてくる。
「えっと、まだ予定は決まってないかな。何か面白いことある?」
「うん、私たち、カフェでおしゃべりすることになったんだ。一緒に来ない?」
裕子は嬉しそうに頷いた。
「いいね!私も行く!」
裕子は友達たちと一緒に過ごすことがとても楽しみだった。
彼女は父子家庭で育っており、母親はいなかった。
健次郎という父親がいつも彼女を支えてくれているが、裕子は友達との時間を大切にしていた。
学校の帰り道、裕子は友達とのカフェデートのことを考えながら歩いていた。
すると、健次郎がお菓子の袋を抱えて歩いてくる姿が目に入った。
「おかえり、裕子。お菓子が好きだったから買ってきたんだ。」
裕子は笑顔で受け取った。
「ありがとう、お父さん。」
家に戻ると、裕子は自分の部屋で宿題を始めた。
机の上には友達との写真や可愛らしい文房具が並べられている。
彼女の友人関係は大切であり、彼女の心の支えでもあった。
夕食の時間、裕子は父と一緒に食卓を囲んだ。
健次郎の料理はいつも美味しく、家族の会話も弾んでいた。
「明日はお母さんの誕生日だね。何かプレゼント考えてる?」
裕子は少し考え込んだが、
「うん、何をあげたらいいかな。」
健次郎は微笑みながら言った。
「お母さんの写真を見せてあげるといいよ。」
裕子は驚いた。
「写真?お母さんの写真、あるんだ?」
健次郎は少し悲しげな表情を浮かべながら、裕子に語り始めた。
「お母さんは、裕子がまだ小さい頃に家を出て行ってしまったんだ。でも、彼女はいつも裕子を大切に思っていたよ。」
裕子の心には、母親の存在に対する思いが芽生えていた。
彼女は母親のことを知りたくなり、再会を夢見るようになった。
誕生日の朝、裕子は早起きしてメイクをして、特別な日を迎える準備をした。
健次郎は裕子に手作りのケーキをプレゼントし、
「お母さんに会いたいと言っていたね。行ってきてもいいよ。ただし、どんな結果になっても、お父さんはいつも裕子の味方だからね」
と言った。
裕子は健次郎の言葉に感謝しながら、母親に会うための準備を整えた。
再会の場所は、裕子と母親がよく遊びに行っていた公園だった。
裕子は少し緊張しながら公園に向かい、母親を探した。
すると、裕子の目には母親の姿が映った。
しかし、彼女は昔と変わらず、自己中心的な態度を崩さなかった。
「あら、裕子ちゃんじゃない!久しぶりだね。」
裕子は少し落胆しながらも、母親に向かって歩いていった。
「お母さん、会いたかったよ。」
母親は男と腕を組み、微笑みながら言った。
「そうね、でも私は今忙しいの。またね。」
裕子は少し寂しい気持ちで帰路についた。しかし、帰り道で思い出したことがあった。
自分が幼い頃、母親がいなくなった理由を知らされていなかったことだ。
家に帰ると、健次郎が玄関で待っていた。
「どうだった?」
裕子は少し涙ぐんで言った。
「お母さんは、変わらなかった。でも、お父さんのことを思い出した。お父さんがずっと私を支えてくれていたことを。」
健次郎は優しく微笑みながら、裕子の頭を撫でた。
「裕子、お父さんはいつも裕子の味方だよ。」
その言葉に、裕子は涙を流しながら笑顔を見せた。
「お父さん、ありがとう。一番頑張っていたのはお父さんだよ。」
父娘は抱き合って泣きながら笑った。
彼らの絆は、一層深まり、新たな家族の形が見つかったのだった。
この日から、裕子は母親の存在よりも、健次郎との絆を大切にするようになった。
彼女は友人たちとの楽しい時間を過ごしながら、大切な家族への感謝の気持ちを忘れることはなかった。
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