高校剣道部の練習が終わり、夕暮れの空に薄いオレンジ色が広がっていた。
珠実は汗を拭いながら、剣道場を後にした。
彼女は剣道部のエースであり、男子生徒たちからも一目置かれる存在だった。
帰り道、珠実はふと、ひとつの疑問が頭をよぎった。
なぜ自分は剣道を始めたのだろうと。
彼女は小さな頃から剣道をやりたいと思っていたわけではなかった。
しかし、中学の時に偶然、剣道の試合を見に行ったことがきっかけで、その迫力に魅了され、自らも剣道を始めることになった。
「でも、それだけじゃないはず」
と珠実は思った。
剣道には何か特別な魅力があるはずだ。
そう思いながら歩いていると、珠実はふと目の前に立ちはだかる雄一郎という男子生徒に気づいた。彼は剣道部の一員であり、珠実と同じく実力者だった。
「お疲れ様、珠実さん」
と雄一郎が言った。
「剣道、楽しんでますか?」
珠実は少し驚いたが、すぐに笑顔で答えた。
「はい、とても楽しいです。でも、なぜ雄一郎さんは剣道をやっているんですか?」
雄一郎は考え込んだ後、少し照れながら答えた。
「実は、僕も小さい頃は剣道に興味がなかったんです。でも、中学の時に親友が剣道を始めたことで、一緒にやることになりました。最初はただのついていくためのきっかけだったけど、次第に剣道そのものに魅了されていきました」
珠実は興味津々で雄一郎の話を聞いた。
「なるほど、それは面白いですね。でも、それだけじゃないはずですよね。剣道には何か特別な魅力があると思うんです」
雄一郎はしばらく黙って考え込んだ後、にっこりと笑った。
「そうだね、確かに剣道には特別な魅力があると思う。剣道はただのスポーツじゃない。相手との駆け引き、自分自身との闘い、それが剣道の醍醐味なんだと思う」
その言葉に珠実は心が震えた。
確かに、剣道はただのスポーツではなかった。
彼女は剣道を通じて、自分自身との闘いを繰り広げてきた。
その中で感じた喜びや成長の達成感は、他の何物にも代えがたいものだった。
「ありがとう、雄一郎さん。あなたの言葉で、私はさらに剣道を愛することができました」
と珠実は嬉しそうに言った。
雄一郎はにっこりと笑いながら、珠実に頷いた。
「お互いに、剣道を楽しみましょうね」
二人は笑顔で別れ、それぞれの道を歩き始めた。
珠実は心が軽くなった気がした。
彼女は剣道を通じて、自分自身を知り、成長していくことができる。
それが彼女にとって、剣道の特別な魅力だった。
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