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思慮する間もなき力

星空 掌編小説

人が正しい判断を下すには経験から思慮するものだが、一昔前の私はその猶予すら与えられていなかった。

誰しも思ったことが本当になれば良いと感じることがあると思うが、それは都合の良い時に自分の望んでいる時だけに力を発揮できるという約束がされているからこそ望める期待だ。

でも、そう人の都合良く力は働くわけがなく、心の中で思ったことが次々に実行されていき、私は沈鬱になった。

それからというもの私は力が欲しいと願うのは辞めて神に力を返上した。

ことの発端は私がテストの点数が後2点足りなくて満点を逃したために怒号が飛んだことによる。

どうして学校では称賛されるのに、私より成績の下のやつなんて腐るほどいるのに、どうして私の家ではこんなに蔑まれ激怒され、罵声を浴びせられなければならないのだろうか。

怒鳴られた後の私は虚しさで一杯だった。

ただただ涙を流すばかりだ。

「どうして私ばっかりこんな運命を辿らなきゃいけないの?」

ベッドに突っ伏し、不平不満をありったけ吐いた。

こうして口にすることで内面にたまったストレスを緩和出来ることを知っていたから最近ではいつもこうしている。

完璧主義の両親の前ではどう言葉を返しても通じない。

いっそのこと一人暮らしでもしてみたい。

中学を卒業したら遠方の高校へ通うことにしよう。

でも私はまだ中2、あと一年もあるのだ。

あと一年もこの殺伐とした空間に身を置かなければならない。

そう考えると息が詰まった。

「もういっそのこと思ったことが本当になればいいのに。」

そう一言残して私は眠ってしまった。

そして次の日異変は起きた。

先日のことを引っ張り出しては私に罵声を浴びせる母。

ストレス解消の一環なのだろうか。

(嗚呼、朝からうるさいなぁ。私の望んでる言葉の一つも言えない親なんて死んじゃえば良いのに。)

そう内心思った時だった。

両親とも突然胸元を押さえ、悶えてそして息絶えた。

一体どういうことだ。

私がやったのか?

私が悪いのか…。

でも良い気分だ。

私を、私を怒らせる奴が悪いんだ。

思ったことが本当になるなら蘇生もできるはず。

私は両親の蘇生を願うとすんなり生き返った。

その後学校の授業を受け、私を称賛する者には褒美を、非難する者は少ないけれど、やった者には罰を与えた。

もう誰も私には逆らえない。

そう思っていたのだが…。

ある日のこと戦略を練っていた最中のことだ。

(あいつは気に入らないからこのタイミングで一旦窒息させて、そして…。)

そう思っただけだった。

廊下が嫌に騒がしかった。

騒ぎ立てる野次馬たちの声に耳を傾けると、私が後でお仕置きをしようとしていた奴が窒息死してしまったらしいのだ。

まさか…。

いやはや。

望んでなんかいない。

ただ思って考えを練っていただけに過ぎない。

その日この力の不便さに気づいた私は、この力の消失を願ったが消えることもなく、無限の苦しみを味わうこととなった。

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