ある晴れた午後、エルマ村はいつもと変わらぬ静けさに包まれていた。
村の中心には、古びた石造りの教会が立っている。
その周囲には色とりどりの花が咲き誇り、まるで村を守るかのように人々を見守っている。
そんな村の片隅に、14歳の少女リナは、友達のティオと一緒に遊んでいた。
「ねぇ、リナ。あの森の奥に行ってみない?」
とティオが目を輝かせながら提案する。
「森の奥?」
リナは少し不安になった。
「そこには、魔女が住んでるって噂だよ。」
「でも、私たちなら大丈夫だよ!」
ティオは自信満々に言った。
「魔女なんて、ただの噂じゃない。実際に見てみたいじゃん!」
リナは少し躊躇ったが、ティオの目の輝きに心を動かされた。
「じゃあ、行ってみるか…でも、あまり深くは入らないよ。」
二人は手を繋ぎ、森の中へと足を踏み入れた。
木々は高くそびえ、薄暗い影が地面を覆っていた。
リナの心臓はドキドキしている。
木々の間を抜けるたびに、風が彼女の頬をかすめ、まるで誰かが耳元で囁いているように感じた。
「ほら、見て!あそこに光が見える!」
ティオが指を指した。
リナは目を凝らすと、ほんのりとした光が森の奥で揺らめいているのを見つけた。
「本当に光がある…行ってみよう!」
リナは興味に駆られ、ティオと共にその光に向かって進む。
木々の間を抜けるたびに、不安と期待が交錯する。
リナの心の中には「魔女がいる」と言われる恐怖と、
「本当にいるのかもしれない」
という好奇心が同居していた。
やがて、二人は光の正体にたどり着いた。
それは、小さなクリスタルのような石が、地面に埋もれて輝いていた。
その周りには、色とりどりの花が咲き乱れ、まるでその石を祝福するかのようだった。
「すごい…これ、なんだろう?」
リナは目を輝かせながら言った。
「もしかして、魔女の宝物かも!」
ティオは目を見開いている。
その時、突然、背後から声がした。
「それは私のものだ。」
二人は振り返ると、そこにはローブをまとった女性が立っていた。
彼女の髪は長く、柔らかな光を放っている。
「私はこの森の守り手。無断で私の宝を取ろうとする者には罰を与える。」
リナは恐怖で足がすくんだ。
「ごめんなさい!私たちはただ…」
「ただ何?好奇心で入ってきたのか?」
女性は冷たい目で見据えた。
「好奇心が命取りになることもある。なぜこの場所に来たのか、自分の心に問いなさい。」
リナは一瞬、言葉を失った。ティオは不安そうに彼女の手を握りしめた。
「でも…私たちはただ、魔女が本当にいるのか確かめたかっただけなんだ。」
「魔女がいると思っているのは、あなたたちの心の中にある恐れだ。」
女性は言った。
「この森には、私だけではなく、あなたたちの心の声も存在する。恐れを抱えることが、魔女を生み出すのだ。」
リナはその言葉にハッとした。
自分の心の中にあった不安や恐れが、彼女をこの場所へ導いたのだ。
彼女は女性の目を真っ直ぐに見据え、
「私たちは、恐れを克服したい。だから、ここに来たんです。」
と告げた。
女性は少し驚いたように目を瞬かせた。
「その答えは、あなたの中にある。恐れを乗り越えることで、真実が見えてくる。私からの贈り物を受け取るがいい。」
そう言うと、女性は手を差し出し、クリスタルの石をリナに渡した。
リナはそれを受け取ると、心が温かくなり、周囲の景色が一瞬輝いた。
「この石は、あなたの心の象徴だ。恐れを抱かず、前に進む力を与えてくれるだろう。」
女性は微笑みながら言った。
「ありがとう…」
リナは感謝の気持ちを込めて言った。
「さあ、帰りなさい。あなたたちの冒険は、これから始まる。」
女性は優しく手を振った。
二人は森を後にし、村へと戻った。
リナの心は軽く、未来への期待で満ちていた。
恐れを克服し、新しい自分を見つけた彼女は、村の仲間たちにその経験を語り始めた。
「私たちは魔女に会ったの。彼女は私たちの心の中の恐れを教えてくれた。」
リナは笑顔で言った。
ティオも同じように微笑んでいた。
「これからは、恐れずに冒険しよう!」
その言葉に村の仲間たちも心を動かされた。
リナは、恐れを乗り越える力を手に入れたことで、自分自身を新たに見つめ直すことができた。
そして、彼女は確信した。
この冒険は、彼女にとっての本当の「魔女との出会い」だったのだ。
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