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恋心の忘却

スマホ 掌編小説

少女の顔を見るといつもどこか惹かれるものがあった。

高校時代の同級生でもある藤宮亜美のことをどこか忘れられずにいる。

気づくといつも彼女のことを考えてしまう。

実際のところ高校時代から好意を寄せていたのだが、踏ん切りがつかず、告白できぬまま卒業してしまった。

別々の学校に進学してもなお、ときよりチャットアプリで連絡を取っていた。

大学に入学して二年の歳月が過ぎた。

短大に通っていた彼女は、もう社会人だ。

チャットを送っても既読が付かなくなり、そのまま時間だけが過ぎていった。

それでも彼女のことが忘れられなくて一瞬でもいいから自分の言葉を受け取ってほしくて、メッセージを送り続けた。

しかし想いに反して、一度たりとも、数か月たっても既読さえつかなくなった。

きっとブロックされたんだ。

自分の言動の何がいけなかったのだろうか。

トーク履歴を遡って考えても答えは出てこなかった。

だから試しに大学の友人に相談してみたが、俺の言動はいたって普通の日常会話で、やましいことも嫌われるような文言も一切ないと言われた。

もしかして彼女の身に何かあったのだろうか。

彼女の家に一度だけ、高校時代に訪れたことがあったから、その時の連絡先を交換していた。

藤宮母という項目をタップし、俺はチャットで連絡をとった。

午後6時を過ぎたころに返信を知らせる効果音が室内に鳴り響いた。

急いでトークを確認する。

そして文面をみて驚きおショックのあまり、スマホを床に落とした。

彼女は、藤宮亜美は今年某日に亡くなっていたのだ。

困惑しながらも、藤宮の母とチャットでコミュニケーションを取った。

そして実際に会って話がしたいというから、俺は土日を使って地元に帰郷することになった。

高校時代一度訪れてい以来、初めての訪問だった。

「よく来てくれたわね。さぁ上がって。」

家に着くとすぐに母が出迎えてくれ、俺は促されるまま家内に入った。

あの時と何も変わらない風景だった。

家具や機器の配置もそのままで、、まるで時間が止まっているかのような錯覚に陥った。

「自殺だったか他殺だったか最後まで分からず終いだったの。あの子の亡骸を見た時は胸が苦しくて・・・。あ、これねあの子のスマホなんだけれど、パスワードがかかっていて私じゃどうにもできないから、あなたにあげるわ。」

そういって藤宮の母は俺の手に亜美のスマホを握らせた。

あいつがかけそうなパスワードといえば・・・。

誕生日なら親も解けるはずだ。

ならあいつがよく話題にしてた同大学の奴の誕生日とかか?

ものは試しでやってみたら開けた。

それとともに少し脱力した。

彼女が選んだのは写真の中でお気に入りのフォルダに入れられていたのは、俺ではなかったからだ。

人のスマホをいじったことがないので少々罪悪感はあったが、その行為で俺は決心がついた。

ずっと恋をして、見てきて、話してきた彼女は、普段最も近くにいてくれる人を選んだ。

遠距離恋愛なんて所詮無理ゲー半身思っていたが、本当にこんな結末になるなんて思っていなかった。

俺は立ち上がり亜美のスマホをもって家を出た。

そして俺はあきらめきれなかった想いを断ち切り、きっぱりと彼女のことを諦めると決意した。

天に向かって俺は彼女の幸せを願った。

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掌編小説私色日記
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