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炬燵の中のエプロン

和服を着た女性 掌編小説

これは私が小学校を卒業し、中学生になりたてのことの話です。

よく冷え込む季節ゆえに、私はストーブを焚いて部屋を暖かくしているのが毎年の流れだが、今年から新しく炬燵を導入した。

ストーブと違って身体を入れれば包み込むような温かさがする炬燵だと思っていたのだが、私が購入した炬燵は普通と明らかに違うところがあるのは、使用してからすぐに気が付いた。

炬燵の中を覗いてみると、そこには小学生くらいの子が着るようなサイズのエプロンが置かれていた。

手に取ってみてもそのエプロンには見覚えがなく、両親に聞いてもそのエプロンについて知らないということだった。

気味が悪いので処分しようと思い、専用のごみ袋に物品を入れた。

ちょうど明日は燃えるゴミの日だから、こんな不快感からもすぐに解放されることだろう。

次の日学校から帰宅して早速炬燵に足を入れると物が足裏にあたる感触がした。

まさか・・・。

炬燵の中を恐る恐る覗くと、やはり捨てたはずのエプロンの姿がそこにあった。

うわ・・・。

思わず声を上げて後ずさりした。

その日からエプロンをどうにか家に戻らないようにしようと努めた。

だがどんな場所において来たとしても、必ずあの炬燵の中に残されたままになっていた。

どうして戻ってくるんだ。

何度やっても戻ってくるものだから、なんだか炬燵に入るのが嫌になって、暫くストーブのほうに行って温まることにしていた。

数週間が経ち、エプロンのことなんて忘れかけていたころ、事態は急変した。

炬燵の中を覗くといつのまにかエプロンは、見知らぬ少女が着ていた。

「君・・誰?」
そう俺は少女に問うが、にっこりと笑いかけるだけで、少女は言葉を発することがなかった。

そしてただ炬燵の中に身を潜めているだけだ。

少女がいる方向から炬燵の布を上げても対する方向に少女が現れ、炬燵に潜り込まなければ少女に触れることができないようだ。

だがその時の俺はそれだけで怖くなってその場から離れていった。

後になってこの物件を買った不動産へ連絡を入れると、前の主の娘がこの家で病死したらしい。

あまりにもの若さゆえに自分が亡くなったことに気がついていないのだろうか。

そんな霊の姿をあの炬燵は映し出す力があったのだろうか。

炬燵が我が家に来るまでは霊の存在をキャッチしたことは一度たりともなかったのに。

後日家内をお祓いしてもらうと、その日以後においてエプロンをした少女も、エプロン本体も観測されることはなかった。

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