新婚生活まではあと2年くらいかな。
式はきっと挙げることはできないだろうけれど、ちゃんと指輪は渡そうと思っている。
毎日あくせく働いて、嫌な仕事も君が返ってきて、エプロン姿のままお帰りといってくれる、それだけですべて忘れられる感じだった。
「今日も料理頑張ったんだ!」
手にばんそうこうをつけながら、左手にお玉を手にしてぶんぶんふりながらそう言っていた。
まったく、僕より料理が苦手だったはずなのに、仕事が忙しくなってからは、僕を心から支えたいと自分なりに頑張りを見せているのだった。
「今日もおいしいよ」
「そう、嬉しい!明日も頑張って作ろうかなぁ?」
それが、褒めることを望んでいるのか、単に僕に喜んでほしいのかは今となってしかわからない。
その時には気づけなかったんだ。
ただ幸せな日々に溺れていて、気づけていたようで気づかない毎日。
君のエプロン姿が遠のく感じがしたのは、同棲してから1年が経過し、結婚指輪を用意して、家に帰った時だった。
正直何か脳に異常が出ていたのかもしれないけれど、階段から転げ落ちて、関節があらぬ方向に曲がっていたエプロン姿の彼女の姿があった。
婚約する以前に運命から彼女が除外された、まるでこの運命の中では、僕と彼女が出会うことが間違えだったと語るように。
今夜はカレーライスだった。
味がとても凝っていておいしい野菜カレーだ。
ただ彼女らしく、少し不器用なところも残っている。
野菜が大きくカットされていた。
それを見て僕は深く涙した。
救急車を呼び、彼女は眠りについた。
今でもそのエプロンは彼女の大切な形見としてとってある。
いつまでも、僕一筋ていてくれた、帰りを待ってくれた彼女の存在を忘れないように。
帰宅するといつもエプロン姿の彼女が出迎えてくれる気がして・・・。
どこかでありもしない再開を望んでいるのかもしれない。
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