夏休みの朝、沙矢香は目を覚ますと、キッチンからふわりと続くいい香りが漂ってきた。
目をこすりながら立ち上がると、亮太が電気ケトルを使って朝の紅茶を淹れていた。
「おはよう、ママ。紅茶淹れておいたよ」
亮太の声に微笑みながら、沙矢香はキッチンに入った。
電気ケトルの赤いランプが点滅し、湯が沸騰している様子だった。
「ありがとう、亮太。相変わらず朝から優しいね」
沙矢香はティーバッグをカップに入れ、湯を注ぐ。
ほのかな紅茶の香りが部屋中に広がり、心地よい気分に包まれた。
亮太は優しい笑顔で沙矢香を見つめながら言った。
「ママ、今日は何をしようかな?夏休みだし、どこかに出かけたりしない?」
亮太の言葉に、沙矢香は考え込んだ。
確かに夏休み中、亮太と一緒に楽しい思い出を作りたいと思っていたが、最近は仕事が忙しく、なかなか亮太との時間を作ることができていなかった。
「亮太、ママは最近忙しかったから、一緒に出かける時間が少なかったよね。今日はどこか特別な場所に連れて行ってあげるよ」
亮太は喜んで笑顔を浮かべた。
「本当に?どこに行くの?」
沙矢香は考えながら、亮太の手を握りながらキッチンを出て、リビングに向かった。
窓から差し込む暖かな陽光が部屋を照らし、ほんのりとした幸せな気持ちが沙矢香の胸を満たしていく。
「亮太、今日は思い出の詰まった公園に行こうと思うんだ。あの公園には私たちの大切な思い出がいっぱいあるんだよ」
亮太は興味津々の表情で沙矢香を見つめた。
「本当に?どんな思い出があるの?」
沙矢香は微笑みながら亮太の頭を撫でた。
「その公園で、亮太が初めて自転車に乗ったんだよ。あの日はとても暑かったけど、亮太は一生懸命にペダルを漕いでいた。その姿を見て、私は本当に感動したんだ。それから、毎年夏休みになると、亮太と一緒に公園に行って遊んでいたんだ」
亮太はじっと沙矢香の話を聞きながら、少し恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「そんなこと、覚えてないよ」
沙矢香は笑いながら言った。
「そうかもしれないけど、それでも私にとっては大切な思い出なんだ。だから、今日はその公園に行って、新たな思い出を作りたいんだ」
亮太は素直に頷いた。
「わかった、ママ。じゃあ、行こう!」
沙矢香と亮太は公園に向かう途中、手をつなぎながら歩いていった。
心地良い風が吹き抜け、公園の入り口に到着した時、沙矢香は思わず息を飲んだ。
「亮太、見てごらん。公園がこんなにきれいになっているよ」
公園の花壇には鮮やかな花が咲き乱れ、新しい遊具が設置されていた。
沙矢香は驚きと感動が入り混じった気持ちで亮太を見つめた。
「ねえ、亮太。この公園は私たちの思い出の場所だけど、これからもずっと大切にしていこうね」
亮太はにっこり笑って言った。
「うん、ママ。これからもずっと一緒に思い出を作ろう」
二人は手を繋いで公園に入り、新しい思い出を作るために、遊び始めたのであった。
夏の陽射しの中で、沙矢香と亮太の笑顔が輝いていた。
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