ロゴユメ

薪ストーブと夢の人

私色日記Ⅲ

パチパチパチ。 ゆらゆらと温かい炎が、木々を刺激しながらパチパチと音を立てる。

その炎を見ていると何かと引き込まれるように、人はまどろんでいくのだ。

遠のく意識の中で、目の前の暖炉の火が、薪に灯された炎が、めらめらと燃え盛り、私を心と体の両方を温かく包み込んでゆく。

いつも見る夢もまた、暖炉の前にいて、ただ火を前にして椅子に腰かけている私がいるのだ。

ただ夢じゃないと認識させる何かがそこにあった。

その何かとは、他界したはずの夫の姿だった。

せっせと薪を入れて、

「今日は結構冷え込むね、たくさん薪を用意してあるから、君が眠りにつくまで、しっかりと見張ってるよ」

と夫が優しく語り掛けるのだった。

懐かしい夫の姿。 夢の中でしか会えない夫の姿。

ああ、愛おしい人よ。

どうか眠りの中に私を長居させてはくれないだろうか。

そう考えていると、

「どうしたんだい?」

と私のほうを振り返った夫が首をかしげていた。

そして近づいて、私の涙袋のところを指で拭う。

ああ、私は泣いているのだ。

決して悲しいという想いだけではない。

儚さと、安堵の両方の感情がこみあげてきて、懐かしい思い出とともに涙という形として、私の中から零れ落ちたのだった。

「何か悲しいことでもあったのかい?」

そう質問するから、私は正直に夫に告げた 。

「夢の中だけではあなたと一緒にいられるから、つい嬉しくて」

「何を言っているんだい?まだ君は眠っていないじゃないか」

本当に現実と錯覚するほどに、まるで人のような人間像が、偶像が私の脳内が構築していく。

だから最初夢見たときは、本当に彼が帰ってきたのだと思った。

だけれど夢から覚めて、ものすごく虚しい気分に襲われていったのだった。

なんどあなたに会いたいと思ったことか。

私だけを見て、私だけに最後まで恋をして。

本当に一般的な男性の象が似合わないくらいだった。

だってそうでしょ?

普通の男性は浮気するのがスタンダードってイメージだし。

でも私の夫は違った。

最初で最期の大切な夫。

そんな最愛の夫が夢に現れるようになってから49日目。

もしかしたら今日が最後なのかもしれないと思うと、また涙があふれてくる。

そっと夢の中の夫が涙をぬぐうものだから、もっと涙があふれてくる。

いっそのことこのまま永眠できたら・・・。

幸せなまま私は眠りたい。

そう思っていたら、目覚めてしまった。

「ああ、夢から覚めてしまったのね・・・。」

私は唖然としていて、その日に何をしたのか思いだせないくらいだった。

気づけば夜になり、眠りにつく。

しかし夢は見ることなく朝が来た。

「もう、お別れなのね」

そう私は悟った。

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私色日記Ⅲ
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