2025年に入り、多くのコンテンツクリエイター、特にVtuber界隈に衝撃が走っています。これまで安定した収益源だったGoogle AdSense、そしてYouTube AdSenseからの収入が軒並み激減しているという声が多数上がっており、その影響は登録者数の多い人気Vtuberにも及んでいます。まさに、これまでの常識が通用しない新たな時代が到来していると言えるでしょう。
Google AdSense収益激減の背景にある複合的な要因
ウェブサイト運営者やブロガーの間で報告されているGoogle AdSenseの収益激減は、Vtuberが活動の基盤とするYouTubeにも共通する、複数の要因が絡み合って生じています。
まず挙げられるのが、生成AIの普及とコンテンツの質の変化です。2023年以降、ChatGPTなどの生成AIによって大量の自動生成コンテンツがウェブ上に溢れかえるようになりました。これにより、Googleの検索アルゴリズムはコンテンツの質をより厳しく評価するようになり、AIが生成した画一的なコンテンツは評価が低くなる傾向にあります。広告主もまた、AIが作った質の低いコンテンツに表示される広告では効果が得られないと感じ、広告費の削減に動くケースが増えているようです。これは、YouTubeにおいてもAI生成コンテンツへの規制強化として現れており、透明性や独自性のない動画は収益化が制限される可能性が高まっています。
次に、Google AdSenseの仕様変更も大きな影響を与えています。2024年からGoogle AdSenseは、従来のクリック課金(CPC)から表示課金(CPM)中心のモデルへと移行しました。これにより、たとえ広告がクリックされたとしても、ユーザーのサイト滞在時間が短かったり、離脱率が高かったりするページでは広告単価が低く設定され、収益が伸び悩む傾向にあります。これはYouTubeの動画広告にも同様の影響を与え、動画の視聴維持率が低い場合、広告表示頻度や単価が下がる要因となっています。
さらに、広告主の広告予算削減も深刻な問題です。世界的な経済不安や景気後退、為替変動などの影響を受け、多くの企業が広告予算を見直しています。特に中小企業では、AIを活用した自社広告の内製化が進み、Googleなどのプラットフォームを介さない広告戦略を取る企業も増えているとのこと。これはYouTubeの広告単価にも直接的に影響し、広告出稿量の減少と単価の下落を引き起こしています。
そして、広告ブロックの普及とユーザー行動の変化も見過ごせません。インターネットユーザーの間で広告ブロックツールの利用が広がり、またスマートフォンユーザーは日常的に広告に触れることで「広告慣れ」が進み、広告に対するクリック率(CTR)が低下しています。これにより、平均CPCは下落傾向にあり、2019年には100円前後だったものが、2025年には70~80円、ジャンルによっては30~50円程度まで下がっているという報告もあります。
最後に、検索エンジン・SNSからの流入減少も収益減の一因です。Googleのアルゴリズムアップデートや、SNS、そしてTikTokのような動画プラットフォームへのユーザー流出により、従来の検索経由のアクセスが減少し、結果として広告のインプレッションやクリック数の減少につながっています。YouTubeにおいても、動画の発見性が低下すれば視聴回数が伸び悩み、それが直接的に収益に影響します。
YouTube AdSense、特にVtuberを直撃した「広告単価の大幅下落」と「ショート動画のBGM収益問題」
YouTube AdSenseの収益激減は、上記の共通要因に加え、YouTube特有の事情が大きく関与しています。特に多くのVtuberが報告しているのが、広告単価(CPM/RPM)の大幅な下落です。2024年4月以降、1再生あたりの広告単価が20~40%も減少したケースが報告されており、ゲーム系やエンタメ系など、Vtuberが多く活動するジャンルで顕著な影響が出ているとのことです。人気Vtuberの中には、2025年4月以降に広告収益が激減したことを公表しているケースもあり、その影響の大きさがうかがえます。
さらに、ショート動画のBGM収益単価の大幅な下落は、ショート動画を積極的に活用しているVtuberにとっては痛手となっています。2025年3月には、YouTubeショートのBGM収益単価が5分の1程度にまで激減したと報告されており、これまでBGM収益で月10万円を稼いでいた人が2万円になるほどのレベルの影響が出ています。これはテレビの切り抜き動画や不正利用対策の一環として、BGM収益が大幅に抑制されたものと見られています。ショート動画は手軽に視聴でき、新たな視聴者を獲得する手段として多くのVtuberが活用していましたが、収益性の低下は今後のショート動画の活用戦略にも影響を与える可能性があります。
また、動画視聴維持率やジャンルによる影響も収益に大きく関わってきます。動画の視聴維持率が低いと広告表示頻度や単価が下がる傾向があり、ショート動画の普及により全体的な視聴維持率が下がりやすくなっていることも一因です。Vtuberのコンテンツは多岐にわたりますが、ジャンルごとの広告市場の変動も大きく、閑散期や不況時には単価が急落するリスクを常に抱えています。
Vtuber晴地うてん氏が語る生々しい実情
人気Vtuberの晴地うてん氏の言葉は、この収益激減の現状を如実に物語っています。特に2025年4月以降の収益の落ち込みについて、動画、ショート動画、そしてライブ配信の広告収入がそれぞれ大幅に減少していると語っています。
動画の収益は、同じ時間再生数だったとしても「2割ぐらいに落ちているし、なんなら2割5分ぐらいの動画もあります」と述べ、大幅な減少を示唆しています。ショート動画も「3割弱落ちている」とのこと。元々ショート動画の収益は「大したことない」と言われていたものの、ちりも積もれば山となり、これまである程度の収益に貢献していただけに、その減少は無視できない影響を及ぼしています。そして、最も減少幅が大きいと晴地うてん氏が語るのがライブ配信の収益です。「3割は余裕で落ちている」「なんなら3割以上かな」という言葉からは、生配信を主軸とするVtuberにとって、その打撃がいかに大きいかが伝わってきます。
これらの減少が積み重なり、総合的な収益は「額面給与、保険料で引かれる手取りこれぐらい変わってますね。過言ではなくガチですっていうか、なんなら多分これより下がってます」と、非常に深刻な状況であることを示唆しています。助けを求めるような彼の言葉は、多くのVtuberが直面している苦境を代弁していると言えるでしょう。
激減する収益への対策:Vtuberが生き残るための「質」と「独自性」そして「多様な収益源」
このような厳しい状況において、Vtuberが生き残り、活動を継続していくためには、これまで以上に戦略的なアプローチが求められます。
最も重要なのは、オリジナリティと専門性の強化です。AIでは生み出せない「人間らしさ」が今後のコンテンツにおいてますます重要になります。Vtuberの場合、それは演者自身の個性や魅力、培ってきた経験、視聴者との関係性、そして独自の視点から生まれる企画力に直結します。単なる流行りのゲーム実況や汎用的な雑談だけでなく、そのVtuberだからこそ提供できる価値、つまり「誰が書いたか」「どんな経験に基づくか」といった部分を前面に出した、専門性の高いコンテンツ、体験談、そして深い考察に基づいた動画や配信が、今後より評価されるでしょう。
次に、多角的な収益モデルの構築が不可欠です。Google AdSenseやYouTube AdSenseといった広告収入だけに依存する「一本足打法」は、今回のような収益激減のリスクを常に抱えています。これからは、企業案件(タイアップ広告)、メンバーシップ(チャンネルメンバーシップ、ファンクラブなど)、グッズ販売、アフィリエイト広告、そして投げ銭(スーパーチャット、Cheerなど)など、複数の収益源を組み合わせることが強く推奨されます。特にVtuberは、キャラクター性やファンとの強いエンゲージメントを活かしたメンバーシップやグッズ販売は、安定した収益源となり得るでしょう。晴地うてん氏が「一方的な贈り物よりも配信者と視聴者のウンウンで行こうぜ」と語っているように、ファンとのインタラクションを通じて得られる収益の重要性は増しています。
サイト(チャンネル)の滞在時間や回遊性を高める工夫も重要です。YouTubeでは、動画の視聴維持率が高いほど広告表示頻度や単価が有利になる傾向があります。Vtuberは、視聴者が飽きずに動画を見続けられるような編集の工夫や、次の動画へ誘導する内部リンク(終了画面やカードなど)の導線を強化することで、視聴者の回遊性を高め、結果的に収益向上につなげられる可能性があります。
また、広告配置や表示速度の最適化も間接的に収益に影響します。これはウェブサイトだけでなく、YouTube動画においても、広告が効果的に表示されるような動画構成や、スムーズな視聴体験を提供することが重要です。
ショート動画に関しては、BGM収益の激減という課題はあるものの、YouTubeがショート動画の収益分配ルールを改善していることを踏まえ、活用方法の最適化が求められます。再生数を稼げれば収益化のチャンスは依然として存在し、今後は1~3分程度のショート動画が主流になる可能性も指摘されています。短い動画でいかに視聴者の興味を引きつけ、本編動画への誘導やチャンネル登録につなげるか、戦略的な活用が重要になるでしょう。
今後の見通しとVtuberに求められる「プロ意識」
生成AIの進化は今後も止まらないでしょう。それに伴い、GoogleやYouTubeといったプラットフォームは、コンテンツの質や「誰が書いたか」「どんな経験に基づくか」といった、より人間的な要素を重視する方向にシフトしていくと考えられます。
このような時代において、Vtuberは自身のコンテンツに専門性、信頼性、独自性を持たせることが、今後の生き残りの鍵となります。単に流行を追うだけでなく、自身の強みや個性を最大限に活かし、視聴者にとって価値のあるコンテンツを提供し続けるプロ意識が求められるでしょう。
アドセンス以外のマネタイズ手段の確保はもちろんのこと、視聴者体験向上のための施策も不可欠です。例えば、視聴者とのコミュニケーションを密にしたり、企画段階から視聴者の意見を取り入れたりすることで、コミュニティを活性化させ、ファンからの直接的な支援につながる可能性もあります。
2025年のGoogle AdSenseおよびYouTube AdSense収益激減は、AIコンテンツの増加、広告モデルの変化、経済環境の悪化、広告ブロックの普及、検索流入減少といった複数の要因が複雑に絡み合った結果です。しかし、これは同時に、コンテンツクリエイター、特にVtuberが自身の活動を見つめ直し、新たな価値を創造する機会でもあります。「質」と「独自性」を追求し、複数の収益源を確保する戦略こそが、この激動の時代を乗り越え、持続可能な活動を続けていくための不可欠な要素となるでしょう。
まとめ:変革期のVtuber業界における新たな戦略の必要性
2025年のアドセンス収益激減によってVtuber業界は大きな転換点を迎えており、この状況を乗り越えるためには、AIでは生み出せない人間らしさと専門性を活かしたコンテンツ制作、メンバーシップやグッズ販売などの複数の収入源の確保、そして視聴者との深い関係性構築による持続可能なビジネスモデルの確立が不可欠となっており、この変革期を新たな成長の機会として捉え、戦略的な対応を行うVtuberこそが、今後の業界をリードしていくことになるでしょう。
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