「あなたが欲しい。」
強い独占欲を持つ私は、目前の彼にそう告げた。
「君の強欲さは僕はよく知っているつもりだが、どうなんだろうか、もの同様に僕のことを欲しているのかな。」
私は彼の、彼だからこそ故の情人とは違った視点の質疑に対し、答えを探した。
冒険家である彼の好みの言葉といえば、生きがい探検、地平線のどこまでもあなたについて行きたいくらい。
そんな言葉だろうか。
つるんでいて、関わっていて、彼がどこまでもロマンチストなことは承知している。
「ものじゃないわ。私にとってあなたは人よ。」
私が彼にこれほど向きになることには、魅了されたのには理由があった。
財力に長けた家系に生まれた私はあらゆることをお金を使ってやることができた。
小学から高校までは毎日がパラダイスで心躍るという具合だったが、大学に進学する頃になってからというもの、ネタが尽きて日々退屈していた。
試したいことの殆どをやり切った感じがするし、ネットサーフィンで出てくる範囲はもう私の過去同然だった。
そんな私に転機が訪れたのは、深夜のバラエティ番組で記者から偶然取材を受けていた男性に目が止まった時だった。
彼はルックスこそ普通といった感じで好意を第一印象で抱く人は少ないはずだった。
私はいつかイケメンのスポーツマンと結婚するのだと思っていたが、テレビの中の彼の質疑に対する応答を聞いて唖然とした。
手のひらからベッドへするりとスマホが落下した。
「僕は旅をしながらwebライターをやっています。文面だけでは伝わりにくいところはこうして写真を挟みながら書いていくことで、臨場感溢れる記事を作成していきます。完全に趣味ですね。」
「この人だ!」
私は落としたスマホを急いで拾い上げ、番組で流れていた彼のSNSアカウントを検索してすぐにフォローし、ダイレクトメッセージを送った。
「そうかそんなことがあったのか。あのテレビ番組が僕らを繋いでくれたんだ。」
私は純粋に見ていて飽きない、常にネタを出力し続ける彼を自分の彼氏に選んだ。
一目惚れはしなかったが、顔以外に初めて人に、異性に興味を持った瞬間だった。
「どう?私とあなたなら結構気が合うと思うのだけれど。」
お金のことなんか一切関係のないl純粋、純情な恋なのだ。
「僕もそう思うよ。」
にこやかに微笑みながら私は彼の背へと腕を回す。
私に同調するように彼も私の背に腕を回す。
そして、私たちは少し長い口づけを交わした。
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